木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

上下で1179ページにも及ぶこの作品。大宅壮一ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞しています。

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」増田 俊也(著)

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

木村政彦は、全日本選手権13年連続保持、天覧試合優勝も含め、15年間不敗のまま引退し、「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」と讃えられ、現在においても史上最強の柔道家とも称されています。

当然私はその現役時代を目にしたことはありませんので、その強さを知る由もありませんが、総合格闘技がブームだった時、その中心にいたブラジルのグレイシー柔術の総裁エリオ・グレイシーが当時、

「私はただ一度、柔術の試合で敗れたことがある。その相手は日本の偉大なる柔道家木村政彦だ。彼との戦いは私にとって生涯忘れられぬ屈辱であり、同時に誇りでもある」

と語っていたのを聞き、その時に初めて、「木村政彦」なる柔道家を知ったのと、同じ日本人として嬉しかった事を憶えています。

一方の「力道山」。勿論こちらもその現役時代をリアルタイムで見た事はありませんが、昭和の振返り等で、力道山の試合見たさに街頭テレビに群がる人の数と、その戦いで当時の日本に勇気を与え、「ヒーロー」で合ったことは知っています。

その二人の名前がタイトルに冠されたこちらの本。作者が執筆開始してから終えるまでに18年間かかったとありますが、読んでいて、その取材量と、その熱に圧倒されます。

まずは、いかにして木村政彦が史上最強の柔道家になったのかが語られる上巻、そして「昭和の巌流島」と呼ばれた木村vs力道山の一戦までと、その後の人生が語られる下巻。

ただそれだけではなく、当時の日本、柔道、プロレス、そしてそれを取り巻く人たちが丁寧に描かれています。

作者である増田俊也さんは自身も柔道経験者であるので、「木村政彦」という唯一無二の柔道家についてついて、もっと知って貰いたかったんだと思います。実際読んでいてその桁外れの強さと、それを裏付ける圧倒的な練習量には驚かされると同時に、私自身そのキャラクターに魅了されました。

「昭和の巌流島」と言われたその一戦までをどう生き、またその後をどう生きたのか。

柔道、格闘技にそれほど興味がない人にも、おすすめの一冊です。

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