感想『輝ける闇』開高健(著)

ベトナム ダナンに旅行に行く際機内の中で読もうと思って買った、こちらの本。

『輝ける闇』開高健(著)

感想『輝ける闇』開高健(著)

開高健というと、私にとっては、ウイスキーのCMで見た事があるという、何となくの記憶しかなく、今までその本を手に取る事は無かったのですが、旅行に行く前、ベトナムに関する本を探していた時、「ベトナム戦争を主題とした文学としては最も有名な作品」という文句が目に留まり、購入しました。

銃声が止んだ……虫が鳴く、猿が叫ぶ、黄昏のヴェトナムの森。その叫喚のなかで人はひっそり死んでゆく。誰も殺せず、誰も救えず、誰のためでもない、空と土の間を漂うしかない焦燥のリズムが亜熱帯アジアの匂いと響きと色のなかに漂う。孤独・不安・徒労・死――ヴェトナムの戦いを肌で感じた著者が、生の異相を果敢に凝視し、戦争の絶望とみにくさをえぐり出した書下ろし長編。

開高健自身が、取材のため南ベトナム政府軍に従軍した際、激しい戦闘に巻き込まれて、奇跡的に生還した体験がベースになっていると言われ、文学という形をとりながらも、その当時の息遣いや鼓動のようなものをリアルに感じることができます。

独特な表現や言い回しが多い本作の中で、ラスト近くに“主人公”が「いやだと思った。つくづく戦争はいやだと思った。」とその心情を語る部分は、読んだ後からも真に迫ってきます。

最後の解説で、秋山駿氏が「出来上がったものが傑作であるか愚作であるか、そんな問いを作者は許さない。」と書いていますが、正にそういった作品だと思います。

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